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お知らせ

両顎手術+マウスピース矯正で下顎前突・顔面非対称を改善した症例

症例報告 / CASE REPORT

骨格性下顎前突および顔面非対称に対し
Surgery First Approachおよびマウスピース型矯正装置を用いて治療した一症例

2026年3月
担当:西川 徹
矯正歯科・顎変形症

PATIENT SUMMARY 患者情報

23歳・女性

下顎の前突感(受け口様)・顔面左右非対称(エラの非対称)

骨格性下顎前突・顔面非対称

Surgery First Approach+マウスピース型矯正装置

両顎手術(Le Fort I型骨切り術+下顎枝矢状分割術(SSRO))+下顎角形成術(エラ形成)

非抜歯

約12ヶ月(動的矯正期間)

3日/枚(光加速装置併用)

歯科矯正用アンカースクリュー(TADs/上顎歯列の遠心移動)+光加速装置(期間短縮)

初診時所見・診断

はじめに、本症例は両顎手術とマウスピース矯正を組み合わせて治療した先進的な治療のレポートである。

下顎の前突感(受け口様の見た目)および顔面の左右非対称を主訴に来院。お顔全体の骨格的なバランスを気にされており、まず鶴木三郎先生(鶴木クリニック)にご相談された経緯がある。鶴木先生よりマウスピース型矯正装置を用いた外科矯正の選択肢があるとして紹介いただき矯正医(西川)が担当した症例である。職業柄、目立つ矯正装置を避けたいという希望もうかがった。

顔貌所見では下顔面の前突感(受け口傾向)と左右非対称を認め、特に右側の下顎枝が左側と比較して長く、下顎角(エラ)部の非対称が顕著であった。口腔内所見では上下顎前歯部に軽度の叢生を認めた。下顎が相対的に大きく、骨格性のAngle III級(下顎前突)傾向を呈していた。さらに骨格に対する歯性代償(デンタルコンペンセーション)として、下顎前歯の舌側傾斜および上顎前歯の唇側傾斜を認めた。精密検査(セファログラム・パノラマX線・三次元CT・デジタル印象採得)により治療計画を立案した。

初診時顔貌写真

初診時顔貌写真 2024年10月
下顎前突 顔面非対称 治療前 顔貌 両顎手術

初診時口腔内写真

初診時口腔内写真 2024年10月
下顎前突 前歯部叢生 治療前 口腔内
診断のポイント:受け口様の見た目および顔面非対称の主因が、歯槽性ではなく骨格性(下顎前突および左右の下顎枝長径差)にあると判断した。あわせて歯性代償も認めたことから、矯正単独治療では軟組織プロファイルおよび非対称の改善に限界があると考え、Surgery First Approachによる外科矯正治療を選択した。

治療方針・治療計画

骨格性下顎前突・顔面非対称に対し、下顎枝矢状分割術(SSRO)による下顎のセットバックおよび左右差を補正する移動、Le Fort I型骨切り術による上顎のわずかな前方移動と咬合平面の時計回転(クロックワイズローテーション)を組み合わせた両顎手術を、術前矯正を行わず先行させるSurgery First Approachを採用した。下顎が大きいIII級傾向であったため、下顎セットバックにより術直後の咬合は一時的にII級傾向となることを想定し、術後にアライナーで上顎歯列を遠心(後方)移動させることでI級関係の咬合へ誘導するシークエンスを設計した。

外科プランニングの詳細(術前3Dシミュレーション)

術前に鶴木三郎先生(鶴木クリニック)との術前カンファレンス(作戦会議)を実施し、三次元CTデータをもとに骨移動量および矯正移動シークエンスを精密に擦り合わせた。本症例は顔面非対称を伴うため、左右で下顎の移動量が異なること、および下顎角(エラ)形成を併施することを考慮した設計が必要であった。

  • 下顎:セットバック 約5mm(左右で移動量に差を設け非対称を補正)
  • 上顎:わずかな前方移動+咬合平面の時計回転(クロックワイズローテーション)
  • 下顎角部:下顎角形成術(エラ形成)による左右非対称の改善
  • 上顎前歯歯軸の改善を見込んだ上で、下顎のセットバック量を決定

矯正担当医(西川)は、左右でセットバック量が異なることを前提に、術前段階で歯牙の移動量を決定した。上顎前歯の唇側傾斜(歯性代償)を改善するため、術後に上顎臼歯部を約2〜2.5mm遠心移動させ、生じたスペースを用いて上顎前歯を後方へ移動させながら歯軸を整えアライメントする設計とした。歯列の確実な遠心移動を目的に、歯科矯正用アンカースクリュー(TADs)を固定源として併用した。術直後は上下顎前歯がほとんど咬合しない状態となるため、矯正治療によって前歯が近づき整っていく過程を、3Dシミュレーションを提示しながら治療開始前に患者へ説明・共有した。

  • 外科処置:両顎手術:Le Fort I型骨切り術+SSRO(Surgery First Approach)
  • 矯正装置:マウスピース型矯正装置(アライナー矯正)
  • 非抜歯にて対応
  • 歯科矯正用アンカースクリュー(TADs)併用(上顎歯列の遠心移動)
  • アライナー交換頻度:光加速装置PBM併用により3日/枚(通常7〜10日)
  • 矯正治療期間:約12ヶ月(動的矯正期間)

治療経過

PHASE 01 精密検査・術前カンファレンス・治療計画立案
セファログラム・パノラマX線・三次元CT・デジタル印象採得を実施。3Dシミュレーションにて骨移動量・アライナー移動シークエンスを精密設計した。鶴木先生との術前カンファレンスでは、顔面非対称を考慮した左右の骨移動量・骨切りラインおよび術後矯正シークエンスを緻密に擦り合わせ、軟組織・硬組織のゴール予測を患者と共有した。
PHASE 02 両顎手術+下顎角形成(Surgery First)
SSROによる下顎のセットバック(約5mm・左右差を補正)、Le Fort I型骨切り術による上顎のわずかな前方移動と咬合平面の時計回転、および下顎角形成術によるエラの非対称改善を施行した。下顎を後方移動させたことに伴い、術直後は設計通り咬合が一時的にII級傾向となり、上下顎前歯はほとんど咬合しない状態であった。
PHASE 03 アライナー矯正開始〜上顎歯列の遠心移動
光加速装置を併用しアライナー交換を3日毎に設定。歯科矯正用アンカースクリューを固定源として上顎臼歯部を約2〜2.5mm遠心移動させ、生じたスペースを用いて上顎前歯を後方移動した。あわせて、下顎前歯の舌側傾斜・上顎前歯の唇側傾斜(歯性代償)を改善する方向に歯軸を整え、前歯のアライメントを行った。
PHASE 04 アンカースクリュー再埋入・咬合の精密調整
矯正途中で歯科矯正用アンカースクリューに動揺を認めたため、矯正期間中に再埋入を行い固定源を再確保した上で、歯列移動を継続した。術直後のII級傾向から、設計通りのI級咬合・正中一致・適切な前歯被蓋へと誘導し、上下顎前歯部の叢生を解消した。
PHASE 05 保定開始
治療終了後、可撤式マウスピース型リテーナーを装着し、保定管理を開始した。

治療経過写真

矯正治療中間時(2026年2月)の口腔内所見。頬側に歯科矯正用アンカースクリューを認め、これを固定源とした上顎歯列の遠心移動がおおよそ完了した状態である。上顎、下顎前歯共に歯軸及び叢生の改善が認められる

治療中間時・口腔内所見(アンカースクリュー併用期)

治療中間時口腔内 2026年2月
アンカースクリュー併用 治療中 口腔内 マウスピース矯正

治療前後比較

動的矯正期間約12ヶ月での治療終了時所見。両顎手術および下顎角形成による骨格の左右対称化と下顎前突感の改善、上下顎前歯部叢生の解消、歯性代償の改善(前歯歯軸の正常化)、および軟組織プロファイルの改善が認められた。あわせて上顎の回転移動により上下顎のバランスとフェイスラインが整った。

顔貌比較

初診時顔貌写真 2024年10月
下顎前突 顔面非対称 治療前 顔貌 両顎手術
治療後顔貌写真 2026年3月
両顎手術 マウスピース矯正 治療後 顔貌 エラ改善

口腔内比較

初診時口腔内写真 2024年10月
下顎前突 前歯部叢生 治療前 口腔内
治療後口腔内写真 2026年3月
両顎手術 治療後 口腔内 I級咬合

執刀医コメント

鶴木クリニック 鶴木三郎先生

本症例は骨格性下顎前突に顔面非対称を伴う症例であり、両顎手術として、SSROによる下顎のセットバック(約5mm)および左右差を考慮した移動、Le Fort I型骨切り術による上顎のわずかな前方移動と咬合平面の時計回転を行った。顔面非対称に対しては、左右で下顎の移動量を変えるとともに下顎角形成術(エラ形成)を併施し、骨格の左右対称化を図った。

Surgery First Approachにおいては、術前の3Dシミュレーションに基づく骨移動量設計と、矯正担当医との術前カンファレンスによる移動シークエンスの擦り合わせが不可欠である。とりわけ非対称症例では、左右の移動量差を矯正側の歯牙移動設計と整合させる必要があり、術前の緻密な連携が治療結果を大きく左右する。

鶴木先生より:「マウスピース(アライナー)にアンカースクリューを併用するという高度な治療計画を西川先生が立て、臼歯の遠心移動によって噛み合わせを含めて矯正の方で改善してもらいました。両顎手術同様、矯正もデジタルシミュレーションを活用することで術前の話し合いもスムーズに進みます。」

考察・担当矯正医コメント

本症例はSurgery First Approach+アライナー矯正による顎変形症(骨格性下顎前突・顔面非対称)治療であり、アンカースクリュー(TADs)及び光加速装置の併用によりアライナー交換頻度を3日/枚に設定することで、動的矯正期間約12ヶ月での治療終了を達成した。

本症例の特徴は顔面非対称を伴う点にあり、SSROでの下顎移動量が左右で異なること、および下顎角形成を併施することを踏まえ、矯正側でも左右差を考慮した歯牙移動量を術前段階で決定する必要があった。Surgery Firstでは歯性代償が残存した状態で骨移動を設計するため、3Dデジタルシミュレーションによる骨・歯牙移動の事前設計が不可欠であり、アライナー矯正はこのシミュレーション設計との親和性が極めて高い。

上顎前歯の唇側傾斜(歯性代償)の改善にあたっては、歯科矯正用アンカースクリューを固定源として上顎臼歯部を約2〜2.5mm遠心移動させ、確保したスペースで前歯を後方移動させながら歯軸を整えた。矯正途中でアンカースクリューに動揺が生じたため再埋入を要したが、患者の良好な装着協力もあり、最終的に設計通りのI級咬合・正中一致・適切な前歯被蓋および歯軸の改善を達成した。

術直後はII級傾向・前歯非接触の状態を経るため、治療開始前に3Dシミュレーションを用いて治療経過の見通しを患者と共有することが、外科矯正における患者理解と協力を得る上で重要であったと考える。外科医との術前カンファレンスと、左右非対称を織り込んだ矯正シークエンス設計こそが、本症例の成否を分けると考える。

本症例のポイント:Surgery First Approach+アライナー矯正(光加速装置使用)+アンカースクリューの併用により、骨格性下顎前突・顔面非対称症例において動的矯正期間約12ヶ月での外科矯正治療を達成した。左右非対称を考慮した骨移動・歯牙移動の設計、歯科矯正用アンカースクリューを用いた上顎歯列の遠心移動、そして外科医との緻密な連携と3Dシミュレーションによる術後矯正設計が、本症例の良好な治療結果の核心であった。

リスク・合併症・注意事項

  • 本症例は顔面非対称を伴う外科矯正であり、左右で骨移動量が異なるため、術後の咬合変化に応じたアライナーの精密な調整と頻回のフィッティング確認を要した。
  • 矯正治療中に歯科矯正用アンカースクリューが動揺する場合があり、本症例では再埋入を行った。
  • 外科矯正治療に伴う術後腫脹・疼痛・開口障害・知覚異常(オトガイ部等)は、一般的な術後反応として生じうる。
  • 矯正治療中は虫歯・歯周病リスクが高まるため、丁寧なブラッシング管理が必要である。
  • 歯根吸収・歯槽骨吸収・ブラックトライアングル(歯間空隙)が生じる可能性があり、定期的なX線評価が必要である。
  • 保定期間中の後戻りリスクがあり、固定式・可撤式リテーナーの長期管理が必要である。
  • 治療結果は骨格・歯牙・軟組織条件により個人差があり、同一の結果を保証するものではない。

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※ 掲載に関する注意事項
本症例は患者本人の同意を得た上で掲載しています。治療結果は個人の骨格・歯牙・軟組織条件により異なり、同様の結果を保証するものではありません。治療費・治療期間は症例により異なります。本症例は自由診療です。詳細は担当医までお問い合わせください。